悪人 −映画−

*ネタばれ注意*


 引き止めてしまうんだろうか。
 自分にとって大切な人が過ちを犯し、自首すると目の前から去っていったら。
 やっと、スキマを埋めてくれる人と出会えたのに・・・・・


 好きでもない女を自分の自尊心のために男の目の前で奪っておきながら山中でゴミのように捨てた増尾圭吾や悪質な詐欺を行う堤下は「分かりやすい悪人」だけれど、この映画はいろんな「悪人」を浮き彫りにする。
 チヤホヤする周りの人
 詐欺に騙されてしまう人
 うっとうしがられてるのに空気を読めず付きまとう女・・・

 首を絞め殺された佳乃はまぎれもなく被害者で、絞め殺した祐一はまぎれもない加害者だけれど。
 祐一に対してぞんざいな態度をとって罵倒した佳乃は加害者でもあり、あらぬ罪を着せられるかもと追い込まれ手にかけてしまった祐一は被害者ともいえるのではないの?
 と、いっても死人に口なし。
 その人の立場や見方、状況が違えば悪か善かなんてとても紙一重だと。実際の世界でもよくよくあることでホラーとは違う、なにかじっとりとした恐さがある。



 あのまま自首していれば?
 こんな女、こっちから願い下げだと追わなければ?
 それとも、あの時母さんがちゃんと戻ってきてくれれば?
 そもそも こんな土地に、こんな親のもとに産まれなければ?

 どこに遡って修正すれば祐一の人生はよくなれたんだろう、なんて考えてもしかたのないことだけれど なんだか凄く観終わった後 切なくなった。



 最後みせた、光代の首を絞める時のとても凶悪な顔。
 一緒にいると苦しいから 何もかも逃げたいということからなのか、今以上光代に自分を思わないするために「悪人」を演じたのか・・・・どぅなんだろう。
 あのまま 誰かがこなければ本当に殺してしまっていたの?



 なんで「金髪」なんだろう?って疑問がはれました。
 フロ入って、メシ食って、じぃさん病院連れて行って、1日終わり。
 蓄積されるフラストレーション。
 村とも、自分とも不釣合いなその「金髪」は小さな小さな抵抗なのかな。



 岡田将生演じる「増尾圭吾」も満島ひかり演じる「石橋佳乃」も醜さっぷりがすんごいよかった。
 増尾のおぼっちゃんダメ男っぷりも、めんどくさいうっとおしさ120%の佳乃も。
 岡田将生オトメンよりもこんな役やったほうがいいなぁ(個人的意見)



 冷えた足を お湯で手で 大切に温める姿
 帰らない人の匂いの毛布を抱く姿
 
 どうしても女性目線で観て
 いとおしくなって、そして切なくなった映画でありました。